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高い工賃を生み出す仕掛け

2023.8.19

わたしたちは、「障害のある人の、人生を輝かせる職場の提供と人生を楽しむ暮らしを支援する」使命のもと、3つの障害福祉サービス事業所とカフェ店舗、グループホームの運営をしています。

一般的な就労が困難な障害のある人に仕事の場を提供する就労継続支援B型事業所。その全国平均工賃は、月額16,507円(令和3年度)です。一方、「ぴーぷるファン」の平均工賃は、全国平均の5倍以上を実現しています。多様な障害をもつそれぞれの方の心豊かな生活のためにも、高い工賃を確保することは非常に重要なことです。

わたしたちが高い工賃を生み出し続けられるポイントは、
① 働く人の、働ける環境づくりから始め、やる気(感情)と体力を育み続けること
② 「省力化」「機械化」「安全化」を進め、作業を単純化すること
③ 景気変動に左右されない委託加工と多様な自主生産の2本柱+小柱による事業体制を作ること
です。どこの事業所でも実践できるようなことです。

やる気と体力を育むカルチャー講座

わたしたちのカルチャー講座は、毎週土曜8時半〜13時に、ウォーキング、陸上、ヨガストレッチ、ニュースポーツ、調理実習、演劇、合唱、ダンスなど様々な活動を実施しています。職員に頼らず利用者のリーダーが主体となり、外部講師を招くといった内容の検討も行います。誰もが頼もしさを発揮し、やりがいのある活動にできることを大切にしています。

美味しい、悔しい、やったー、綺麗などの感情は、その人自身が行動し味わうことで育ちます。そして、感情の育成と維持力を育む中で、やる気と意欲も一緒に育ちます。

例えば、スポーツ競技では、目標を掲げ、練習をして大会に出場します。入賞し歓喜。負けて悔しい。そういった感情を体験します。調理実習では、恐る恐る包丁を握ってつくった食事を、美味しい。まずい。と言って食べる体験ひとつひとつが成長の礎となります。季節ごとに施設外にでかけ美しさを体験したり、文化祭のチーム対抗の出し物合戦に情熱をもって取り組んだり…。

いずれも、意欲や責任感、体力を育み、それが、生産性の向上につながるものとなっています。「次に〇〇大会があるので、この作業を早く綺麗に仕上げて、土曜日のカルチャー講座で練習する!」といった利用者と職員の会話。昼食後の合間に文化祭の練習をチームでする姿…。利用者のみなさんが、活き活きと輝き、支え合い、その結果、他施設の倍以上の量をやり遂げるなど、社会の期待に応えることができています。

持っている力を活かす、できる環境を

機械の導入では、数百万から一千万以上の高価な機械も導入しています。補助金も利用しますが、間に合わない場合は自分たちで借金してでも入れるようにしています。それによって、作業をより単純化し、障害のある人でもできる環境を生み出すことができます。

わたしたちは、障害のせいでできないことは訓練しなくていいと思っています。人は、できることとできないことの間に「苦手」なことがある。しかし、障害はそれと少し違って、訓練したからできるわけではありません。時計が読めない、計算ができない、それを「やればできる」と言われ続けると途方もない辛い経験にしかならないのです。

強い事業を育てる

コロナ禍でのわたしたちの課題は、自主生産事業における作業リスクをいかに分散させるかということと、小柱となる事業をいかに増強できるかということでした。

2020年年明けからいよいよコロナ禍の影響が大きく立ちはだかってきました。まずは、イベント中止が相次ぎました。その余波で、お弁当の注文はゼロになり、関連する販売事業は通常月の5割減になるという状況が3ヶ月続きました。2020年4月には、新築の越前市役所にてカフェを仮オープンさせるも、すぐに休業せざるを得ない状況になりました。カフェ店舗の正式オープンが1年伸びることになりましたが、その間に、メニュー開発に注力することにしました。どのような環境にあってもできることが必ずあります。

障がい者の可能性はもっと広がる

見学に来た方から「なぜここではみんな活気があるのか」と言ってくださることがあります。心豊かな生活を実現する素地を養う経験と高い工賃、その両方を得ることのできる取り組みがここにはあります。障害を個性ととらえると、自分の居場所が生まれ、表情が生まれます。